2021年9月13日に開催されるフーコムセミナー「インボイス制度について」の講師をして頂く『税理士法人松本』代表の松本先生に、セミナーに先立ち先生が風俗業界に関わることになったいきさつや風俗経営者の陥りやすい税務処理の問題点について伺いました。
本を書いて、教育に関わりたかった
―――2021年9月13日に開催されるフーコムセミナー「インボイス制度について」に先立ち、松本先生が風俗業界に関わることになったいきさつをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
(松本氏)よろしくお願いします。私が風俗に特化していった理由ですね。まず税理士になりました。で、独立をすることになったんですが、ゆくゆくは、大学とかで教育をやりたかったんですよ、先生ってことです。
―――それはまた、なぜですか
(松本氏)何かしら若い人と触れ合っていたかったんですよね。
―――なるほど。でも、なれなかった?
(松本氏)教育をするためには、教員免許を取らないといけないんですよ。大学だったら教育課程ってあったじゃないですか、そんなことも知らなくて、教育課程、取ってなかったわけですよ。(笑)普通のルートからの教員にはなれないというふうになって、大学のときの先生に、教育をやるにはどうすればいいですかって聞いたら、本を書いてこいって言われたんですよ。本を書くことによって権威づけされるから、それで大学なりに推薦してやるっていうふうに言われたんですね。
―――それで、本を書こうと? 凄いバイタリティーですね。
(松本氏)「はい、わかりました。本を書いてきます。」できますって言ったものの、その時20代で独立したての無名の税理士なんで、どうしようっていうので、いろいろな出版社に「僕、こういう者です。マネーリテラシーみたいな本を書きたいです。」っていうのを書面で送ったんですよ。
―――マネーリテラシーですか?
(松本氏)はい。例えばある若者が月収20万円ねって最初に約束をしていて、初任給をもらったら手取り15万円。「え!? 何これ、所得税と健康保険ってなによ!」みたいな感じじゃないですか。学校ではそんなこと教えてくれないし、社会人だったらいきなり「おい、段取り組んで行ってこい!」って言われても、段取りって何ですか、時間割りしかわからないですっていう状態ですよね。そんな社会人1年生のための教科書を書きたかったんです。
―――でも、そんな簡単に、本は出せませんよね?
(松本氏)もちろんです。送った書面はことごとく出版社に無視されました。(笑)でも、たまたま私の友達が出版社に繋がりのあるライターをしていまして、その友達に小学館を繋いで貰えたんです。小学館の編集長に、先程のマネーリテラシーの本が書きたいですっていう話をしたら「つまらないです」と言われてしまって、たまたま雑談の中で、いや実は今、風俗系の国税局の税務調査をやっているんですよね、みたいな話になり、「それ面白いっすね」みたいな話になって、「よし、ドラえもん王国からエロ本出してみましょう」みたいな悪ノリが始まって、それで、出たんですよ。
―――いきなりですか!?
(松本氏)はい。小学館って講談社に次いで業界で二番目に大きな会社だったんですよ、その当時。初版が1万5000冊っていう、大量の本が全国に出回ったんですね。
―――トントン拍子すぎませんか?
(松本氏)本は出せたからこれで教育をやれるかなと思って、良かったなとは思ったんですけど・・・。
風俗業界への偏見
―――そうはならなかった?
(松本氏) 出版した本の広告が新聞とかにもデカデカとのったりして、うちの親父から電話がかかってきたんですよ。おまえ、風俗とかって何をやっているんだよ、と。ウチの親父は弁護士なので、硬い訳ですよ。また、税理士の業務上でも、新規のお客様とかとお相手するときに、私の名前を検索するじゃないですか。松本崇宏っていうふうに検索すると、最初に出した本が『デリヘルはなぜ儲かるのか』って本なんですけど、その当時に画像検索すると、もう全部画面がピンク色になるんですよ。
―――画面がピンク色!?
(松本氏)「松本先生のところって風俗やっていますよね」みたいなことを言われて、「うちは風俗はやっていないですけど、ウチのお客さんが風俗なんです」って言っても「いかがわしいところは結構です!」とか。あとは、求人で他の同業の税理士事務所よりちょっとうちの方が5000円とか給料が高かったとすると「風俗をやっているからですよね」・・・マイナスの影響が、すごく出たんです。
―――風俗業界って、そんな風に思われがちですよね
(松本氏)やってみてわかったのは、風俗業界って、ネガティブなイメージがすごく強いですね。税理士業界から見ると、例えば反社の方が居そうとか、ややこしい人が多いんじゃないかみたいな、そんなイメージが多いからか、誰も触りたがらないんですよ。
―――それでも松本先生は、風俗業界に関わっていらっしゃる
(松本氏)それでも困っている人たちがたくさんいて、こうなってしまった以上、僕の名前はもうしばらくは消せないし、汚れちゃったというか、そういうことなのだから、もうこれはちょっと困っている人たちを助けようと。
―――それが風俗業界に関わったいきさつなんですね
(松本氏)そうやって腹をくくって間口を広げていったら全国中からお問い合わせをいただいていて、今、47都道府県の全部にお客さんがいる状態ができました。
―――思った以上の反響だったんですね。
(松本氏)はい。我々ほど風俗業界に特化している税理士事務所は無いと思います。
風俗に特化したことのメリット
―――風俗に特化したことで生まれたメリットはありますか
(松本氏)最大のメリットは情報です。
―――情報、ですか?
(松本氏)47都道府県の全部にお客さんがいる状態だと、いろんなエリアの情報が入ってくるんです。例えば、東京って、東京の各地に税務署がいっぱいあってですね、その上に東京国税局っていうのがあるんですよ。でも、埼玉の方に行くと関東信越国税局とか、大阪は大阪国税局と、いろいろと税務署の管理が変わってくるんですよ。でも、各国税局同士の情報共有は、あんまりないんですよ。
―――なるほど。国税局のやり方が、各地で異なると?
(松本氏)僕らは、全国中の風俗経営をしているお客様に対して、税金の申告のお手伝いや、税務調査の対応をしているので、むしろ情報交換や教えてくださいみたいな。
―――他にも風俗に特化したことのメリットはありますか
(松本氏)ノウハウはかなり蓄積されたと思いますね。例えばデリヘルさんであれば、キャストの女の子にお金を渡します。その時、源泉を取るのか取らないのかとか、風俗業界を知らない税理士さんだと困るんですよね。うちはそういう情報がたくさんあるので、それは強みになりますね。
―――松本氏曰く風俗業界でも一般の業界でも「勝つ」方法論は変わらないのだそう。その辺りのお話は、次回のインタビューで。
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『税理士法人松本』 松本氏
全国に5拠点を構えるデリヘル・キャバクラ専門税理士法人「税理士法人松本」代表。『デリヘルはなぜ儲かるのか』『風俗オーナー限定 最強の「節税」』著者。
『税理士法人松本』
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