2021年9月13日に開催されるフーコムセミナー「インボイス制度について」の講師をして頂く『税理士法人松本』代表の松本先生に、セミナーに先立ち先生が風俗業界に関わることになったいきさつや風俗経営者の陥りやすい税務処理の問題点について伺いました。
前回の記事はこちら【コロナ禍による経営状況の変化】
組織化と人の管理の重要性
―――前回のインタビューで、税務署に狙われ易いお店について教えて頂きました。そうならない方法はあるのでしょうか
(松本氏)お話の中で伸びている経営者はどんなだとか、そんな話があったかと思うんですけど、それもその辺に繋がってくる。イケてる経営者は、それが風俗であろうが、そうでなかろうが組織化がしっかりできるか。人の管理がしっかりできているか、それができている状態であれば、データを持っていかれてしまったりと、そういうことには繋がらないと思います。
―――それができていない経営者が多い?
(松本氏)そうです。だから風俗系で勝てている方は、一般業種であったとしても勝てると思います。たまたま選んだ業種が風俗なだけであって、とうことですよね。ビジネスこそ勝てば官軍、企業は勝たなければならない。
―――どんな業種であっても同じなんですね
(松本氏)これは日本マクドナルドの創設者、藤田さんの言葉です。「負けてから、いかにして必然的に負けたかを理屈を並べていても始まらない。景気が悪いコロナの世の中が悪いからでは売れない。こう言っている人は、自分が勉強不足だと言っているようなものだ」まさにそうだと思うんですよね。
―――良い言葉ですね
(松本氏)特に風俗業は楽をして稼げると勘違いしている人がいるかもしれない。でも、そんな甘くはないじゃないですか。僕たちがこの商売を始めたぐらいのときと比べ、業界がだいぶ変わってきた。そんな簡単に立ち上がらない。手元に100万円があってデリヘルが立ち上がるかって言ったら、今は絶対立ち上がらないですよね。
―――確かに風俗業も変わってきましたよね
(松本氏)この業界で勝つっていうのは、甘くはないと思うんですね。だからこの業界で勝っているところっていうのは、本当に別の業種でも成功するだろう。その内の一つは、組織作りっていうところだと思うんです。だから、人間1人で成功する、財をなしていくっていうのは、やっぱり難しいけれど、人を束ねていって協力があると成功しますよ。僕らの会社も一緒だと思いますね。働いている人たちがわくわくしてくれて、夢がある組織作りというか、そんなのが一般業種と変わらなくなってきているんだろうなという感じですね。
―――風俗業もそうならなければならない
(松本氏)風俗だからアングラみたいなものはもう通用しない、じゃないですけれども、税金もちゃんと払うし、社員教育もするし社員に対しての待遇、それが時間なのか給料なのか、いろんなものがあると思うんですけども、それが大事だと思うんですよね。
―――風俗業も一般企業と変わらないものが求められている
(松本氏)「会社は社員のためにより良い環境を提供し、社員は会社のミッションに従ってアウトプットする。会社が努力を怠ったときは、社員の転職という形で意思表示する」一般業種だろうが風俗系だろうが、もう本当にそんなに垣根がないと思いますね。
―――風俗業だから、緩くて許される、という時代じゃないですもんね
(松本氏)オラオラの軍隊方式だけでイケてるっていう、そんな人もう居なくないですか?前からのお店ではあるかもしれないすけど、今からそれを立ち上げようとすると難しいんじゃないかなと思うんです。特に今の若い世代の方々って僕自身もまさにそのお話だと、何考えているかわからないっていうのは、ありますね。
風俗業界で成功することの旨味とは
―――少し風俗に厳しい話になってしまいました。松本さんは、色々な業種の方とお付き合いがあると思いますが、他のビジネスに比べ風俗で成功する旨味ってありますか。
(松本氏)やっぱり一番は現金商売であることだと思います。例えば建設業だったら、1億円の案件を受注した場合、売り上げは1億円なわけです。でもそれをやるにあたって外注さんへ8000万円を先払いで支払わなければならない。でも利益は2000万円出ているわけじゃないですか。だから、損益計算書上、利益上では2000万円の利益が出ますってなっているんですけど、1億円の入金は、120日後とか。でも外注の8000万円については、すぐに支払わなければならない。
―――8000万円の赤字になってしまう?
(松本氏)利益は出ているけれどもお金が足りない状態、「勘定合って銭足らず」っていうんですけど、それが起きやすいですよね。でも、現金商売はその日に入金があるのでなんとかなるじゃないですか。そこが一番大きいメリットじゃないですか。現金が手元にあるっていうのは魔物なので、その分現金をしっかり管理していないと、不正が行われるのも多いです。だから、管理が難しい業種なんでしょうね。
―――なるほど。他にもメリットはありますか
(松本氏)あと、風俗のメリットは産業が大きいところですね。お金の回るところの大きさですね。僕らは産業の分類を見るんです。産業の分類が箱で示されているんですが、肉眼で見える箱はそれなりにでかいんですよ、建設業、不動産業、自動車業とかってでかいのがあって、風俗業と(両手を広げて)これぐらいでこう見えるんですよ。風俗業って5兆円産業って言われているらしいんです。
―――5兆円産業はやはり大きいですよね
(松本氏)不動産業とか自動車産業っていう普通の業種であれば、国が把握していると思うんです。みんな税金を申告しているんで。でも風俗系ってそもそも申告をしていない。僕の肌感だと3割もしていない。だから国ですら本当の産業の大きさを知っていない。ひょっとしたらもっとでかいかもしれない。あと風俗は歴史が長いんです。江戸の時代から遊郭はあった訳ですし、そう簡単になくなる商売ではない。やり方によっては大きく跳ねる業種だと思いますね。
―――参入すべき魅力はある
(松本氏)そもそも参入するのに資格がいらない。そう考えると、開業の敷居は低いのかもしれない。しかし、憧れでやっちゃう人もいるかもしれないですけど、今は本当難しいですよね。女の子が集められる人がいないとなかなか大変な業種だと思います。飲食店の場合は、物件の場所、すなわち不動産勝負のところだったり、味以外でも勝負できるところあるかもしれないすけど、風俗は正に女の子勝負ですよね。そこで勝負できないと厳しい。
「インボイス」とは
―――2021年9月13日に開催されるフーコムセミナー「インボイス制度について」に先駆け「インボイス」について少し教えて頂けますか
(松本氏)まず消費税ですね。例えば1億円売っていたとしたら、1億1000万円の内、1000万円をお店が預かっている状態なんです。例えば外注さんに6000万払いましたよっていうふうになったら、その10%の600万円分は外注先が負担するべき消費税になりますよね。そうなると、お客さんから預かった1000万円から、自分たちが払った消費税分600万を差し引いた400万円を国に納めましょうっていうのが消費税なんですよ。
―――はい
(松本氏)こちらが払ったところの6000万円に対する600万円が今までだったら1000万円から600万円を控除した400万円を国に消費税として支払います。でもインボイスが始まることによって、この600万円を引くのに要件が厳しくなんですよ。だから最悪、この600万円引けなくなります。預かった1000万円をそのまま納税するっていう事になる可能性があります。
―――風俗業にはどのような影響が
(松本氏)インボイスが始まるとそもそもお店側が外注さんとして支払った人たち自体が消費税を支払う事業者になっていないと、引けなくなっちゃうんですよ。デリヘルでいえば、キャストの女の子が外注になっています。女の子自身が消費税を支払う事業者になっていないと、お店側はその女の子に支払った6000万円のうちの600万円が引けなくなってしまうんです。
―――つまり女の子が支払うべき消費税をお店が負担する?
(松本氏)女の子の方がそもそも税金の申告をしているかっていうと、まずしていない。仮にしていたとしても、2年前の売上高が1000万円を超えていないと消費税の課税事業者にならないんです。ということは、女の子の中で申告をしている人たちはおそらく10%もいない、申告をしている中で、2年前の売上高が1000万円超えている人って、多分100人に1人ぐらい豆粒ぐらいの確率になるわけです。だからお店側にとってみれば、女の子の今まで引けた消費税分を丸被りする可能性が出てきます。だから一番影響を受けやすいのは、風俗系ですね、風俗、キャバクラ、あと建設系でしょうか、1人親方を束ねているところとか、商品が人間であるところが一番影響を受けるんですよね。
―――インタビューでは松本氏から「インボイス」導入後のアドバイスについてもお伺いしましたがその辺りのお話は2021年9月13日に開催されるフーコムセミナー「インボイス制度について」へぜひお越しくださいませ。
『税理士法人松本』 松本氏
全国に5拠点を構えるデリヘル・キャバクラ専門税理士法人「税理士法人松本」代表。『デリヘルはなぜ儲かるのか』『風俗オーナー限定 最強の「節税」』著者。
『税理士法人松本』
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