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「私たちは納税者だ。それでも支援は受けられないのか?」──最高裁判決と、風俗経営者としての本音
新型コロナのパンデミックに際し、多くの業種に支給された「持続化給付金」。
しかし、私たち風俗業界──とくにデリバリーヘルスを営む事業者たちは、最初からその対象外とされていました。
感染拡大による営業自粛、来店減、従業員への補償といった対応に追われながらも、制度の門前で閉め出された感覚は、今も忘れられません。
そしてついに、ある同業者が国を相手に裁判を起こしました。
2025年6月16日。最高裁は「除外は合憲」と判断。
私たちの中にあった「きっと分かってもらえるはずだ」という最後の希望は、静かに断ち切られました。
“公費支出に値しない業種”──それが私たちの扱いだった
今回の最高裁判決の多数意見(4人)は、こう言います。
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国には給付金支出に関して裁量がある
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性風俗業は風営法で「特別に規制される」業種
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従業員の「尊厳を害するおそれ」がある職種には、納税者の理解が得られにくい
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だから、公費支出から除外しても合理的
つまり、法的に営業が認められているにもかかわらず、性風俗業は「支援に値しない仕事」と判断されたのです。
私たちは毎月、きちんと納税をしています。社会保険も払っています。従業員やキャストに対しても、可能なかぎりの感染対策と安全な職場環境の提供に努めてきました。
それでも「尊厳を害するおそれがあるから」という理由で、“支援の外側”に置かれたのです。
宮川裁判長の反対意見──私たちはこの声を待っていた
こうした多数意見に対して、ただ一人「違憲」の立場を貫いたのが、裁判長の宮川美津子氏でした。
宮川裁判長はこう述べています。
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給付金の対象から業種で排除するのは、「法の下の平等」に反する
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性風俗で働く人の尊厳は、その人が自律的に働いている限り、他人が勝手に否定するべきではない
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法的に認められた職業を制度から外すことは、「職業差別」にあたる
私たちは、ようやく「現場の声を理解しようとした公人」がいたことに安堵しました。
経営者としてだけでなく、一人の納税者としても、そして人間としても、宮川裁判長の意見には強く共感せざるを得ません。
この国では、誰が“まっとうな仕事”と決めるのか?
「風俗業は“公費を使うにはふさわしくない職業”である」
この判決の本質は、そういうラベル付けを社会全体に許してしまったということです。
国が、司法が、そして一部の納税者が、“支援に値する仕事”と“そうでない仕事”を選別する。そこに、合理性という名前の正当化が与えられてしまった。
しかし、思い出してほしいのです。
あの緊急事態宣言下でも、誰かの不安を癒し、孤独を和らげる存在として、私たちのサービスが求められていたことを。
お客様がいた以上、そこには確かに「社会的役割」があったはずです。
私たちは“例外”ではない──これが業界の共通認識だ
今回の裁判は、ある意味では「風俗業界の社会的立場」を問うものでもありました。
敗訴という結果は悔しい。しかし、それでも私たちは声を上げ続けたい。
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税金を納めている以上、制度の枠から除外される筋合いはない
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誰かがやらなければならない仕事を、私たちは担っている
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一部の偏見や古い価値観で、その意義を切り捨てないでほしい
この想いは、全国の風俗店経営者に共通するはずです。
最後に──「違憲」ではなかった。でも「不公正」だった
最高裁は「合憲」と言いました。
けれど、私たちにはやはり「不公正だ」と感じる現実があります。
この裁判を経て明らかになったのは、法の限界ではなく、社会の偏見かもしれません。
だからこそ、宮川裁判長の声は、法廷の中だけで終わらせてはならないと感じます。
私たちは、これからも胸を張ってこの業界を支えます。
たとえ支援されなくても、たとえ理解されなくても、
「尊厳をもって働く人がここにいる」──その事実だけは、決して否定させません。