風営法の改正により一部地域を除いて新規では店舗型や対面受付の営業ができなくなりました。
これらの営業をするには既存の営業権付きの物件を利用するしかありません。
ですが、営業既得権付き物件での営業も注意しなければならないことがあります。
今回は営業既得権付き物件について分かりやすくご説明するために
- 営業既得権とは
- 用途規制地域について
- 保全対象の施設を見逃したらどうなるのか
- 営業既得権付き物件で営業をする上での危険性
これらについて順を追ってお話ししていきます。
この記事の目次
営業既得権とは
営業既得権についてより分かりやすくする為、以前もブログで説明したことがあるのですがまずは「保全対象施設からの距離の規制」について触れていきましょう。
ご存じだと思いますが、風俗営業はどこでもできるわけではありませんよね。
風俗営業が禁止されている場所は用途規制地域といいます。
用途規制地域とは、簡単に説明すると・・・
都市計画法によって住居、商業、工業などの土地利用が定められています。
用途地域はこの3つ
- 住居地域
- 商業地域
- 工業地域
そのうち風俗営業の許可が取れるのは
- 商業地域
- 工業地域
この2つ。
更に以下の2つにも注意が必要です。
1.住居が多数密集している地域はダメ。
2.保全対象の施設がある場所から100メートル離れる。
1も2も同じような意味で規制されています。
風俗営業店の悪影響を受ける可能性があるからダメだということですね。
では2について簡単に説明しますが、風営法では保全施設(保育園・学校・病院・図書館など)と、例えばキャバクラやラブホテル、風俗店が、学校などの保全対象の施設と近い距離にあると”子どもに影響を及ぼしかねない”として一定の距離が設けられるよう「距離の規制」が定められています。
そして保全対象施設についてはその都道府県によって違います。
一定の距離というのは東京都の場合、用途別に距離が違うのですが営業所から最短で20m、最長で100mです。
なので開業する際にはこの保全対象施設の位置にも気を付けておかなければなりません。
風俗営業の許可が取れる場所かどうかの確認方法はその土地の役所に聞くことです。
それが1番確実で手っ取り早い方法でしょう。
保全対象の施設があることを見落として契約すると、また1から物件を探さなくてはいけなくなります。
以下、詳しく説明します。
保全施設を見逃していた場合どうなるのか
では、もう場所も決めて「いざ!申請!」と自分のお店を開業することで希望に満ち、意気揚々と申請に行ったのに、申請してみたら自分の営業所の周りに保全対象施設があるのを見逃していた。
ということが起きてしまったとします。
するとどうなるのか。
その申請は当然ながら「不許可」となります。
これはかなり悔しいです。
悔しいどころの話ではありません。
せっかく準備をして、物件も借りたのに(もちろんお金も支払い済み)それが不許可となるともう営業ができないので、これは致命的なミス。とんでもないことですよね。
すべてが無駄となってしまうのですから。
実際に見落としがあった場合、その行政書士に損害賠償請求がされることもあります。
なので行政書士の間では「風営法申請の用途地、保全対象施設の調査は命」と言われています。
慣れている行政書士でも見逃すことのあるものです。
1年に1度はこういった事例が生じると聞いています。
なので物件を契約する前に必ず専門知識のある行政書士に調査を依頼してください。
ここまでで風営法の「保全対象施設からの距離の規制」についてはご理解いただけたでしょうか。
では営業既得権についてご説明しましょう。
営業既得権
「既得権」とは既に得た権利のことです。
これを聞けば、あとは簡単にご理解いただけると思います。
簡単な例を用いてご説明しましょう。
例えば、学校などの保全対象施設の周りで
「この距離って営業していいの?学校と距離が近くないか?」と思うようなキャバクラがあったとします。
こういう場合で営業しているケースは「既得権」が働いているのです。
どういったことかというと、保全対象施設から一定の距離区域内にはキャバクラなどの社交飲食店の営業許可は取れないという規定があります。
ですが、元々キャバクラが営業されている場所の近くに後から保全対象施設が立った場合は既得権「既に得た権利」で営業ができるのです。
これを営業既得権といいます。
そのキャバクラは既にそこで営業をする権利を得ているということです。
だからそのまま営業していても問題ありません。
かみ砕いた言い方にすると、
近くにそういったキャバクラなどの社交飲食店があるのを知っていながら学校を建てたのは学校運営側ですよね。
分かっていて建てたんだから近隣住民からの反応、子どもへの影響など、その判断はそちらで考えてください。
ということです。
「学校を建てたいからお店をやめろ」というのは通りません。
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営業既得権付き物件での営業について
「既得権がある物件を借りる事ができれば、改めて風俗営業の許可を取らなくても、その物件で営業ができる」とお思いになると思いますが、そういうわけにもいかないのです。
そういった安易な理解で契約を進めてしまうと大変な事になってしまいます。
注意することについてお話ししましょう。
1.個人名義は名義貸しになる可能性がある。
営業既得権のある物件を借りることができても”個人名義の物件の場合は名義貸しになる可能性があるから危険”です。
では詳しく知らない方もいると思うので、名義貸しにどれだけ注意が必要なのか説明します。
名義貸しの危険性
名義貸しは犯罪になります。
他人に名義を貸すということは偽装行為の一種とみなされます。
名義を貸した方はもちろん、借りた方も共犯になりますし、非常にリスクの高い行為です。
もし名義貸しと認められた場合は風営法上で最も重い罰則が科せられます。
2.名義を変えずに営業権だけ借りるようなケースが増加。
最近では名義を変えずに営業権だけを借りるケースが増えています。
ですがその場合「やっぱり今月末でもう終わりにして」と言われたらたとえお店が軌道に乗っていても返すしかありません。
そうして、そのままお店を事実上乗っ取られる可能性があります。
3.風俗営業の許可は物件ではなく人に与えられるもの
既得権付きの物件というのはあくまでも「その場所で元々営業していたから、そこで営業を続ける権利がある物件」ということです。
その物件、場所が既に持っている権利のこと。
風俗営業の許可というのは営業する「その人」に与えらえるもなので別です。
風俗営業の許可は必ず取得してください。
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法人の場合は代表者変更で営業可能
例えば、借りられることになった物件の持ち主が法人で借りていた場合。
これはあなたが代表者変更の手続きをすれば、そこの代表者になるのでその物件で営業できます。
そうすれば名義の偽装などではなく正しい手続きの元、契約できるので犯罪行為にはなりません。
まとめ
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