風俗店はなぜ税務調査の対象になりやすいのか?

風俗経営基礎知識

テレビのニュース番組でも度々取り上げられる「脱税」に関する事件。国税局の摘発対象となった大きな案件ともなれば、世間の話題にもなります。風俗業界において頻繁に「某店に査察が入った」等との情報が流布することからも判るように、他の業界に比べて税務調査の対象となる事が多いようです。その理由を具体的な事例を挙げながら説明します。

税務調査の具体的内容

税務調査とは、国税庁・税務署が納税義務を怠っている、若しくは税額を過少申告している疑いのある法人や個人を調べることです。税務調査は対象法人の事業所(風俗店であればお店や事務所・キャストの待機所等)と法人代表者の自宅(風俗店であればオーナーの自宅)同時に行われます。

会計帳簿や実際の業務に使用されたパソコンデータなどを押収した上で精査し、税務申告された売り上げと実際のお金の流れを照合します。風俗店の税務調査の場合、税務職員が内定調査として来店し「某日・某時、〇〇ちゃんを指名して1時間で〇円支払った」事が、正確に帳簿へ反映されているかを確認します。帳簿から漏れていれば、全ての売り上げを正確に把握・記帳していないと判定され、売上を詐称しているとみなされます。

また電話回線の通話履歴や来店客のクレジットカード利用履歴、客や業者間のメールのやりとり等も細かく精査され、税務申告内容と齟齬があれば詐称の疑いがかけられます。経費として申告されたお金が私的流用されていないか等、微に入り細に入り調査されます。

風俗店が税務調査の対象となり易い理由

風俗業界では他の業種に比べ、多額の現金が毎日やりとりされます。客単価が1万円を切ることは少なく、来店客が支払い履歴を残したくない意図も働き、未だに現金で支払いが行われます。お店から女性キャストへの報酬も、現金日払いです。そのためPOSシステムやクレジットカード利用明細などの電子データに金額の履歴が残りにくく「多少誤魔化してもばれないだろう」という甘えが生じます。稀に運営者が法人を設立することなく個人的に風俗店の経営を行い、税務申告自体をしていない事例さえあるようです。

そうした「虚偽申告・脱税行為」が横行すれば、税務調査の対象とされてしまうのは当然です。また、女性キャストが税務調査の対象となる事も多いようです。風俗店と女性キャストは雇用主・被雇用者ではなく、受発注の関係、つまり女性キャストは風俗店から仕事を請け負う個人事業主です。

これを理解していない女性キャストが個人事業主としての利益・報酬を税務申告しなければ「脱税行為」です。月に数百万も稼ぐ「個人事業主」が「脱税行為」をはたらけば、税務調査の対象となるのも頷けます。風俗業界で起こった変わった事例では、女性キャストが風俗店の「従業員」とみなされ「従業員」への健康保険加入や消費税や所得税の控除を怠った罪に問われた事例です。

先程も述べた通り、風俗業界では女性キャストは個人事業主とみなされていますが「待機所に待機させ、時間拘束をしている」「風俗店の請け負った仕事の報酬を女性キャストへ給与として支払っている」事を理由に「雇用・被雇用」の関係とみなされたのです。こうなった場合の追徴額は非常に大きくなります。

税務調査の対象とならないために

「性」を対象とした商売をしているグレーな生業である風俗業に対する世間の目は、まだまだ厳しいものです。その厳しさに負けぬよう、正確な帳簿をつけてきちんと納税しクリーンな業界を目指すべきです。

必要であれば顧問税理士と契約し、在籍キャストの採用時にも税務についてきちんと説明するよう心がけましょう。

まとめ

「電子データ」に残らない多額の現金が毎日やりとりされる風俗業界は、不正も多く行われているとみなされ、税務署にマークされています。店舗の無いデリバリーヘルスであってもお店のホームページを閲覧すれば、在籍キャストの数や客の来店数、客単価が概算でき、凡その事業規模、売上額も算出できます。その概算額が実際の税務申告額と大きく異なっていれば、確実に税務調査の対象となるでしょう。摘発されれば多額の追徴金が課され、業務停止や廃業へと追い込まれます。例え風俗店というグレーとみなされている業界であっても、納税義務は果たしていくべきです。